猫にそんなこと聞かないで。

発達障害とか精神科医とか猫とか外国とかの話

日々是、命懸け

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最近精神科医らしいことやってない、と毒を吐いたのを神様が聞き入れて下さったのか、昨夜はとっても精神科医らしい仕事が待っていた。

 

 

 

隔離室の患者さんが暴れて、ベッド柵で内側の戸のガラスを割り、続いて外に続く窓にパイプベッドを持ち上げてガツンガツンと破壊活動を始めたと報告あり。

 


行ってみるとそこは地獄絵図。

床いっぱいに散乱したガラス、床にべっとりと付いた血、中でものすごい大男が興奮して我を忘れている…

 


こうなってしまったら、もう拘束をしてしまわないと私たちの命も危ない。

 


ところで私は不当な長期拘束や長期入院には断固反対するけど、精神科の実態も知らず、拘束や入院自体を人権侵害だとか言ってくる人には「いちど精神科で働いてみ?」と言いたい。患者さんの状態によっては拘束しなきゃ死人が出てもおかしくないような時があるんだよ。

 


窓が完全に割れた隔離室の中で一心不乱にベッド柵を打ちつけて外の窓を割ろうとしていた男性患者は、悲しいことにとてもボリューミーな体つきをしていた。若くて、丸太のような立派な手足…

 


そんな日に限って男性スタッフはあまり大きくない男性看護師が1人、守衛さんも一応入れたら2人…

 


総勢5人ほどが集まったが、あのボリューミーな体を見るにつけ、5人が一斉にわっと彼に向かっていってもはね飛ばされそう。それどころか、大勢が向かってきたということで余計に興奮が強くなり危険が伴いそうだ…

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恐ろしい賭けではあるが、私が1人で彼と話をして興奮を鎮めることにした。何かあったら、看護師たちが後に控えているが、何かあった時は即死かもな。骨は拾ってくれ…。因果な仕事だ。

 


私はまず彼に、傷の手当てをさせてくれと言った。部屋の中をまるで手負いのライオンのように興奮しうろうろしていた彼が、手当ての申し出に応じた。

 


彼は怒って興奮しているのではなかった。激しく混乱して焦っている様子だった。私は彼に優しく語りかけ手当てをしながらも、いざとなったら素早くよけるよう集中力を研ぎすまさせた。手当の後、どさくさに紛れて頓服の液剤を飲ませることに成功した。

 


その後、「床に散乱したガラスを片付けさせて欲しい。踏んだら危ないから部屋の奥の角に座っていて欲しい」と頼み、男性看護師と守衛さんにホウキで掃いてもらう間、患者さんの動きを封じるため、私は引き続き、傷の手当てと称して彼の腕の血を拭いていた。

 


途中一瞬表情が険しいものに変わり、腕が前に出たが、私は優しい声色を変えずなだめ続けたためか、患者さんは再び落ち着いた。

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ガラスを全部掃除し、ベッド柵を部屋から出すことに成功したが、ここからが試練だ。窓ガラスの割れた部屋にいつまでも居させるわけにはいかない。

 


患者さんは再び興奮し出し、割れたガラス窓で手が傷つくのも構わずそこから出ようとし始めた。

 


私は彼に言った。

「ケガした腕からばい菌が入って感染症になったらいけないから、感染症を予防する注射をうたせて欲しい」と。

 


もちろん本当はそんな目的の注射では無いのだが、彼は意外にも応じた。私はある注射を腕に筋注した。彼に、「ふらついてるからマットに横になろう」と促すと、彼は素直に横になり、やがて寝息を立て始めた。

 


こうして無事、死人を出すことなく拘束が完了した。あまりにも足が太すぎて拘束帯を止めるのに難儀した。

 


患者さんに対してこんなこと言うのはプロの精神科医にあるまじきことかもしれない。でも言うよ、人間だから。

 


あぁ、怖かった…

 

 

 

いつ死ぬか分からないから、たまにはうまいものでも食べよっと!

 


私のブログが1ヵ月何の音沙汰もなかったら、兵庫県の方角に向かって合掌してください。

 


ではまた。

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