猫にそんなこと聞かないで。

発達障害とか精神科医とか猫とか外国とかの話

餓死しそうな人に対してやってはいけないこと。~ブレサリアンと摂食障害とリフィーディングシンドローム~


(約2800文字)

昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおったそうな。

ある日、家の戸を叩く音に気付いたおばあさんが戸を開けると、そこには今にも餓死しそうなガリガリに痩せた男が立っておった。食べるものがなく、もう数か月も飲まず食わずだったそうな。

かわいそうに思った二人は、なけなしの食糧も惜しまず、男のために大盛りのご飯と汁物を拵えてあげたんだと。男はたいそう喜び、ものすごい勢いで全部残さず平らげたそうな。

さて、この続きがどうなるか…は後に置いといて、

この世には食事をせずに生きていく人たちがいるようだ。以下、ワラウクルミさんの記事をリンクさせて頂いた。
waraukurumi.com
ブレサリアンという名前は、呼吸(ブレス)のみで生きていくというのが由来のようだ。
上の記事の人達は週に数回は少量のジュースや野菜スープを飲んだりするらしいけど、上級者になると、水も飲まないで宇宙エネルギーの空気だけの摂取で生きているという。インドのある男は7歳からそれを始めて、もう70年もの間飲まず食わずで生きているんだそうだ。インドはいろんな聖人や仙人がいるからなぁ。口から金とか灰とか出していたサイババとか…

(ちなみに私のサイババ・アシュラム潜入記はこちら)
nkobi1121.hatenablog.com


もちろんこの男のような不食が可能かどうかは現代科学では説明できない。
空気を摂取して糧に変える植物だって二酸化炭素だけではでんぷんは作れない。たとえ二酸化炭素と水があっても混ぜ合わせたところでせいぜい炭酸水ができるのみだ。でんぷんを作るにはそれに特化した酵素が必要だ。さらにタンパク質を作るにあたっては窒素を確保しなければならない。空気中に窒素は多く含まれているが、そのままの形では利用はできない。植物は地中の硝酸塩・亜硝酸塩などから取り入れることができるが、果たしてこの男がどうやって窒素を取り入れているか、謎だ。一旦膀胱にたまっていた尿が再度体内に吸収されたのが観察されたというのだから、もしかしたら窒素は尿を使い回ししているのかもしれない。すご過ぎて理解不能

日本にも不食を実行した人がいて、俳優の榎木孝明さんが1か月医師のモニタリング下で水分のみを摂っていたが、途中の血圧変動に対して塩分と糖分を勧められ、時々飴をなめてしのいだという。その後の写真の頬のコケ具合を見ると、これは本当にその通り実行したんだろうなと思う。
一方で、森美智代さんという鍼灸師は一日青汁1杯だけで20年以上元気そうに活動しており、20代の時に患った脊髄小脳変性症もこの不食で治癒したとのこと。体重は60㎏を保っててふくふくとしている。ここまでくると私の理解を超えている。

こうした現象に対し、現在の科学での説明は不可能なため、どうしても説明はスピリチュアルなものになってくる。
私自身は特にスピリチュアルを否定するものではない。私自身は霊的な能力など皆無で、単に寺や神社や教会などに行くと落ち着くから好き、という宗教心もへったくれもないミーハーな感性しかない。自分自身にわからないことについては別に否定はしない。

じゃあなぜ今回この記事を取り上げたかと言うと、危険だからだ。
はてなのブロガーさんの中にも、占星術や手相やタロットなどができたり動物の心がわかったりといろいろ特殊な能力がある人達がいて、それについてはただただ『すごいなぁ…』と思うだけなんだけど、下手にまねたら危険である類のスピについては看過できないので注意喚起しておきたい。

現代人は食べ過ぎていると思うので、ある程度の小食やプチ断食は大いに賛成だ。日々の摂取カロリーを25%ほど減らすと眠っていたサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化して健康によいらしいので私も実行したいが、意志が弱くてなかなかできないでいる。
ただ、たった1日水分摂取をしなかっただけでも高齢者などは脱水から血栓が起こりやすくなり脳梗塞心筋梗塞のリスクがある。不食主義者はノウハウを書いた本を出しているが、一応注意喚起はしているらしい。安全のため、本のみで実践するのではなく自分たちのところで修行するようにということであれば、そこにお金の匂いがするよなぁ…

科学とスピリチュアルをわける点として、再現性の有無があると思う。
STAP細胞が認められなかったのは、データの改ざんのせいではなく、小保方さん以外の人が同じやり方を踏襲してもSTAP細胞を作れなかったことだ。科学は、その理論に正しく従えばだれもが同じ答えを出すことが出来るものである。一方、たとえインドのおっさんが水も飲まずに何十年も生きられたのが100歩譲って事実だとしても、その方法で他の誰一人として同じことが出来なければ、これは科学ではない。このブレサリアンを他人に勧める人は、『体が軽くなった。オーラが見えるようになった』のようなプラスの面だけ語るのではなく、再現性がないゆえにリスクが伴うという点もきちんと伝えなければいけない。実際に本に書いてあるやり方に従って餓死した人もいるらしい。
私が大学病院に勤めていた頃は、先ほどの1日1杯の青汁のみの森美智代さんと同じような食事を続けていた摂食障害の患者さんがよく救急外来に運ばれてきていた。森さんと食事の量や内容的には同様なのに、みな20㎏台でERにて内科的治療から開始しなければならない重篤な状態だった。森さんが嘘をついているかどうかなど私にはわからないが、少なくとも再現性の保証がされていないことについては安易にまねないでほしいし、安易に布教しないでほしい。

それにしても、これが再現性が可能であれば、食料問題が解決するのになぁ。ブレサリアンの人たちにはぜひ再現性の獲得に向けてがんばって頂きたい。

最後に、皆さんに知っておいて頂きたいことがある。
皆さんの身近な人でブレサリアンであれ摂食障害であれ困窮の果てであれ、極端に痩せていて食事をしていない人が『しばらく何も食べてない』とふらふらになっていたのを見たら、決して大量の食事を与えないで救急車を呼んでほしい。
リフィーディング症候群という、低栄養状態の人に急激に栄養投与を行うことによって、急激な代謝亢進が電解質異常などを引き起こし致死的な不整脈から心停止を起こすことがある。このことは意外に医療者でも知らない人もいるが、一般の人も知っておいてほしいと思う。記事の最初に挙げた「日本昔話」風の結末は、もうおわかりだろう。

それにしても、数時間のおやつすら我慢できない私って…
(; ・`д・´)

ではまた。